ウランガラスの解説です。

1)ウランガラスとは何ですか?
 ウランガラスとは、着色剤として微量のウランを混ぜたガラスのことで、主に黄色や緑色をしたガラスです。ウランを発見したのは、1789年、ドイツの化学者クラップロートですが、その頃の利用法として、ガラスへの着色が考えられました。そして、1830年ころ、チェコ・ボヘミア地方のガラス工芸家フランツ・リーデルが初めてウランガラスを作りだしたとされています。その後、ボヘミア地方を中心に、英国・フランスなどヨーロッパ各地で、花瓶や食器など各種のウランガラス製品が大量に作られました。1900年代には米国でも多くのガラス会社が製造していました。現在では、米国などで僅かな量が生産されるに過ぎません。このウランガラスの最大の特徴は、真っ暗な中で紫外線ランプをあてると、黄緑色の蛍光を出す点でしょう。なお、ウランガラスに含まれるウランは微量ですので、健康には全く影響はありません。
2)ウランガラスは何から出来ているのですか?
 ウランガラスの原料は、ガラスの一般的な成分である珪砂(SiO2)、苛性カリ(KOH)、石灰石(CaCO3) 、硝酸カリウム(KNO3)のほかに、2ウラン酸ソーダ(Na2U2O7・6H2O)を0.1から1%程度入れています。
 所で、ボヘミア地方では、ガラスに鉛を入れることによって、屈折率の大きい、いわゆるクリスタルガラスが製造されていました。ウランガラスに鉛などの金属があると蛍光を妨害するとされており、従って、ウランガラスに鉛は入っていないとされていますが、米国のバーミューズガラスの特許では鉛を20%程度入れるとしています。
蛍光が発見されたのは今から約100年前ですから、それまではクリスタルガラスにウランを入れていた可能性もあります。
3)なぜ、蛍光を出すのですか?
 1895年にレントゲンがX線を発見し、翌1896年にアンリ・ベクレルがウランの放射能を発見します。そして1898年にはキューリー夫妻がピッチブレンド(ウラン鉱石)からラジウムを分離・発見します。アンリ・ベクレルとその父エドモンドは、ウラン化合物の蛍光研究者としても有名です。
 所で、蛍光というのは、放射線や電子線あるいは紫外線などを吸収した原子が、エネルギーの高い状態に励起され、その原子が元に戻る時に、色々な色の光を出すことをさします。皆さんの周りの蛍光灯やTVは、この原理を利用したものです。
 ウラン原子(厳密には酸化ウランイオンの分子)は、紫外線のエネルギーを吸収し、元に戻るときに550nm(5500Å)の黄緑色の光を出します(正確には500nmから600nmまでの範囲の光を出します)。従って、紫外線ランプで照射すると、最もはっきりと蛍光が見えますが、紫外線は、太陽光や普通の蛍光灯にも含まれているために、これらの下でも蛍光を出します。そして、ガラス内部で発生した蛍光は、ガラスの中を反射しながら進み、ガラスのカット面などから出てきます。ウランガラスをよく見ると、カット面などで特に黄緑色が強いことが分かります。「元に戻るなら、どうして同じ紫外線が出て来ないのですか?」という質問が来そうですが、吸収した時より弱いエネルギー(長い波長、つまり可視光)になるため、とだけ答えておきましょう。

4)ウランガラスの色はどんなものがあるのですか?
 ウランの化合物には黄色のものが多いですが、蛍光を出すのは六価のウラニル・イオン(UO2++) を含む化合物だけです。従って、ウランガラスの中でも、ウランは金属あるいは酸化物ではなくて、ウラニルイオンの形をしています。このことはベクレル親子により発見されました。
 さて、通常光の下で見られるウランガラスの色について、文献によれば、次のようになっています。

  1. ガラスに2ウラン酸ソーダを加えると、黄色のウランガラスとなります。この色のウランガラスが最も数が多く出回っています。
  2. 更に、硫酸銅または重クロム酸カリや酸化クロムを加えると、緑色のウランガラスとなります。
  3. ウランガラスに酸化セレンを加えると、オレンジ色のウランガラスとなります。
  4. ウランガラスに微量の金を加えると、ピンク色のウランガラスとなります。いわゆるバーミューズガラスです。
  5. ウランガラスに酸化銅を加えると、青色のウランガラスとなります。

 なお、ウランのイオン状態は3/4/5/6価の4種類があり、ガラスに混ぜると3価(紫色)、4価(緑色/茶色)、5価(黒色)、6価(黄色)となることが知られています。(仏:CEA資料による

5)ウランガラスの放射能は大丈夫ですか?
 1Kgのウランガラス(大きい花瓶など)に含まれているウランを1g(0.1%)とすると、U235が0.007g、U238が0.993gとなります。U235の半減期は7億年、U238の半減期は45億年なので、同じ量であれば半減期の短いU235の方が放射能が強いことになりますが、量が少ないので、結局、U238の方が支配的となります。結局、毎秒のガンマ線放出数は約1万個(1万ベクレル=0.3マイクロキューリー)となります。なお、U238が崩壊して、更に別の放射性同位元素になるので、実際にはもう少し多くなります。
 しかし、自然界には宇宙や地球からの放射線があり、また、人体のカリウムも放射線を出しているほか、TVやパソコンの画面からは放射線が出ています。実際、ウランガラスを測定して見ると、TVやパソコンの放射線と同程度であることが分かります(なお、液晶型のパソコンは放射能は出しません。)。また、ウランはガラスに閉じ込められており、外へ出ることもありません。以上のように、ウランガラスの放射能について心配する必要は全くありません。
6)ウランガラスが殆ど作られなくなった理由はなんですか?
 いくつか理由というか、歴史があります。1)第二次大戦中にウランが原子爆弾に使えることが分かり、米国政府が使用を禁止したこと。2)戦後、使用禁止は解除されたが、ウランの値段が上がったこと。3)黄色や緑色はウラン以外でも出せるようになったこと。4)ウランの(僅かとはいえ)放射能に対し、ガラス職人の安全のため、厳しい規制が要求されたこと。などのためです。
7)日本でも作っていたのですか?
 日本でもウランガラスは大正から昭和の初めにかけて大量に製造されました。岩城硝子(現在も営業)の創始者となった岩城瀧次郎が米国から製造法を持ち帰ったとされています。なぜか緑色のものが多いようです(欧米のものは黄色いものが多いですが)。その後、戦争によって途絶えましたが、岡山県・人形峠(上斎原村)で2002年に国産ウランガラスの試作が開始されました。


引用文献
 @「ウランガラス」苫米地顕、岩波ブックセンター
 A「Yellow Green Vaseline, A Guide to the Magic Glass」 
 B「ガラスハンドブック」朝倉書店

 -----------------------------------------------------------------

主催:ウランガラス同好会::ウランガラスに関心がある方ならどなたでも参加できます。
会費無料。

ウランガラス同好会TOPPAGEへ戻る

[PR]動画 inserted by FC2 system