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紫外線照射によるウランガラスの蛍光とは?
及び、ウランガラスの磁性について
ウランガラスに紫外線などの電磁波を照射すると、美しい緑色の蛍光がでることは100年前から知られていました(★)。
蛍光が出る仕組みは、紫外線のエネルギーにより、ウランの原子核の周りを回る電子が、より高いエネルギー位置にはじき出され、その高い位置から元に戻る際に放出されるエネルギーが、波長550nmの緑色の光(蛍光)になるとされています。
(厳密には、後述のように、ウランガラスの蛍光はウラニルイオン[UO2分子のイオン:(UO2)2+]を周る合計106個の電子の励起によるものとされています。「Laser Induced Fluorescence of the Uranyl
Ion in Autunite」 Middlebury College 1992年) |
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(★)ガシオットの発光実験:
ウランガラスの蛍光は、紫外線以外でも見られます。今から100年以上前に、ガシオットという人により、放電によるウランガラス発光実験がなされ、19世紀の聴衆を喜ばせ、また、煙に巻いた」という記事を元に、ウランガラス同好会のAN会員が、2002年に、これを再現しました。詳しくはここをクリック。
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しかし、どの波長の紫外線が最も強い蛍光を出すのか?ということは知られていませんでした。
ウランガラス同好会会員の那須昭一さんが、この程、世界で初めてとなる研究を発表されました。那須さんの許可を得て、その一部をご紹介します。(那須昭一ほか「ウランガラスの発光寿命の温度依存性と磁性」粉体粉末冶金学会、1-57A、2008年秋季大会)
ウランガラスの蛍光に有効な紫外線灯は? |
右図は那須さんらの測定値で、ウランガラスに紫外線を照射し、どの波長の紫外線が、緑色蛍光を出すのに寄与しているか、を示しています。
この図から、327nmの短波長の紫外線が最も有効で、次に420nmの紫色光が有効であることが分かります。
図に、4種類の紫外線灯の蛍光波長を重ねてみます(高島会員の補記)。すると、@紫外線殺菌灯(250nmの紫外線を出すいわゆる水銀灯)が1番で、次は長波長のUV-LEDであることが分かります。残念ながら、日亜化学のUV-LEDはUGには向いていないようです。
なお、UV-LEDよりも、紫色や青色LEDの方が有効かも知れませんが、ウランガラスに青色が反射するので、UV-LEDの方が緑色蛍光が美しく見えます。(青色LEDでも緑色蛍光が出ることは前から知っていましたが・・・) |
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2011年、スパイラルのブラックライトを買いました。蛍光灯式のブラックライトですが、電球のような口金になっており、天井灯や卓上灯の電球と交換できます。
JEFCOM社の型番はEFD23-SSBK。20W。
ピークは375nmで、主に350-400nmの紫外線しか出ないのですが、SLの前照灯(直径45cm)に取り付けて見ると、かなりUGの蛍光が強く感じられました。
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ウランガラスの蛍光の波長(発光スペクトル) |
右図は那須さんらの測定値で、ウランガラスから出てくる蛍光の波長の分布(発光スペクトル)を示しています。
512nmと527nmにピークのある緑色の蛍光であることが分かります。
これらのデータは、ガラスハンドブックに出ているもの(本記事の最後)のものとほぼ同じです。
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蛍光(けいこう)と燐光(りんこう) |
今回の那須さんらの発見のもう一つは、ウランガラスの蛍光は、厳密には「燐光」である、ということです。
一般に蛍光物質に紫外線などを照射すると蛍光が出ますが、紫外線照射を止めても、発光が一定時間持続するものを燐光と言います。
右図の「RT(室温)」のデータを見ると、紫外線照射後、なだらかに蛍光が弱くなり、500マイクロ秒で1桁程度、下がっているのが分かります。このように、マイクロ秒以上、発光が持続するものを燐光と分類していて、ウランガラスの蛍光は燐光であることが分かります。
もっとも、人間の目では、この違いは分からないでしょう。
なお、蛍光は、英語では「fluorescence」、また、燐光は「phosphorescence」と言います。
著者の那須会員の了解を得て、下記論文より転載。
Shoichi Nasu et al."Temperature Dependence of Time Resolved
Photoluminescence at 512nm and at 528nm,
and Magnetic Properties of Uranium Glass",
.雑誌「粉体および粉末冶金」 56(9), P578-581,粉体粉末冶金協会発行、」2009年 |
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ウランガラスの磁性 |
今回の那須さんらの新発見の最後は、ウランガラスは常磁性体である、ということです。
常磁性(じょうじせい、Paramagnetism)とは、外部磁場が無いときには磁化を持たず、磁場を印加するとその方向に弱く磁化する磁性を指し、上記論文に、ウランガラスの測定値が掲載されています。
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以上、2009年10月記。2013年8月一部補記。
ウランガラス=(UO2)2+含有ガラスの蛍光
ウランガラス、つまり、(UO2)2+ (ウラニルイオン)含有ガラスは、一般に緑色ないし黄緑色の蛍光を発するが,(UO4)2-や(U207)2-のようなウラネートイオンの状態で含まれるガラスは蛍光を発しない。これは(UO2)2+が周囲のイオンや分子の影響から遮断される結果と思われている。
したがって,ウラニルイオンの生成を増加するようなガラス組成の変化は蛍光を増し、たとえば、NWF
(ガラスネットワーク構造体)では(PO4) 3-や(BO3)3-は(SiO4)4-や(BO4)5-に比べ負電荷が少ないため,蛍光の発生を妨げず、ことにP205を多く含むガラスで蛍光が著しく,NWM(ガラスネットワークの性質を変化させる添加剤)では、アルカリやアルカリ土頼の増加は、ウラニウムをウラニルイオンの状態からウラネートイオンの状態にして蛍光を弱くし,アルカリ同士ではイオン半径の大きなアルカリは,イオン半径の小さなアルカリに比べて蛍光が強く,NWFのNWMに対する割合の多いガラスほど蛍光が強い。(UO2)2+含有ガラスの蛍光のスペクトル曲線の一例を図に示す。
また(UO2)2+含有ガラスの蛍光は、ガラス中の微量水分の影響を強くうけるといわれている。
・・・以上「ガラスハンドブック」23.6節より引用。(2001年記事)
UO2 1%含有,Na2O 25%,CaO 7%.SiO2 68%ガラスのR20,RO置換の影響
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