無料-
出会い-
花-
キャッシング
放射能を含む黄色いガラス
ウランガラス(以下UG)に関するドイツ語の本「URANGLAS」には、黄色いガラスで放射能を含むが、UGではないものが紹介されています。このガラスは蛍光を出さないのでUGではありませんが、興味深いガラスなので、KT会員が翻訳された結果を引用します。原文(ドイツ語)はここをクリック。
どうして黄色のガラスにトリウムが含まれるようになったのか?
蚤の市で偶然、お茶用の美しい繊細な柄の蜜黄色の透明なプレス・ガラスを入手した。(下左写真)
その後11週間にわたって地球化学的に探究を行ったので、以下に示す。
ガイガーカウンタでは弱いが明確な反応が見られ、アンナゲルプと呼ばれるウランガラス特有の黄色とは異なっていたが、黄色のガラスで、ウランガラスと推定した。しかし、実験室では、蛍光も発せず、γスペクトルでもウランの崩壊生成物の痕跡は検知できなかった。
一方、トリウムとその崩壊生成物ははっきりと検知されたが、モナザイトのγスペクトルをとると、多量のトリウムの近くに4つの地殻成分が検出された。よって、このカップは、モナザイトかそれを含んだ石英を使用した可能性は排除された。
電話で同僚に尋ねたがよい結果は得られなかった。6週目に、チェコのリンダワのガラス芸術家から、最初の情報が得られた。彼は、この黄色は酸化セリウムを添加した結果の色であることを知っていた。酸化セリウムの製造者を尋ねていくと、オーストリアのトライプアッシャー社、それからチェコのカールスバード(カルロビバリ)のガラス製造者モーゼル社(MOSER社)に到達した。カールスバードのモーゼル社で製造していたセリウム(Ce)を添加した近代ガラスの黄色ガラスで、商品名エルドール(Eldor)からも、γスペクトルでトリウムが検知された。
(下記の注1参照)
レーゲンスブルクのP.Schutz氏のコレクションのなかに同様の黄色のものがあり、氏はこれを蚤の市で綺麗な黄色の灰皿をとして見つけたが、Auerと刻印されており、トリウムを含有していた。(下右写真)
これはベルリン近郊のOranienburgのアウエル社(Auer-werke社)で広告用プレゼントとして製造されていたものと推定されるとしていた。アウエル社はモナザイト砂からトリウムを取出しており、ドイツのウラン・プロジェクト(核兵器製造計画)の関与社であり、1945年3月の米軍の空襲で破壊された。
(下記の注2参照)
トリウムは1900年に化学者Auer von Welsbachがモナザイトから抽出したことで知られており、現在は普通のガスマントル燈にトリウムと酸化セリウムの混合物が入れられている。また、酸化セリウムはガラスの色付けに使用されている。
(下記の注3参照)
なお、Weyl及びBreitは着色剤としてチタン酸化物に僅かの酸化セリウムを添加することを考えついた。
10週目に結論が得られた。モナザイトからのCe,Thの分離はCe3+,Th4+,にCa2+を添加することで行われた。3者とも似たイオン半径を持っているので1900年から1940年まではモナザイトからは、セリウムとトリウムは完全に分離出来なかった。よって得られたセリウムはトリウムで微量に汚染されていた。モナザイトからのセリウムとトリウムは周期律表をみて分かる通り、トリウムは原子番号90番でアクチニドの先頭であり、Ceは原子番号58番でランタニド元素の始めである。両者は性質が似ているので、分離することが出来なかった。
11週目に、ある同僚から、1930ー1950年に米国で使用された黄色ガラスに同様のものが掲載されたカタログのコピーをもらった。またP氏の著作を非難することも避けねばならない。知らなかっただけである。始めに米国で製造された黄色ガラスが当地の蚤の市に到着したらしい。繊細なプレス細工でベルギーかフランスで製作されたように思えただけである。
ベルリンのアウエル会社は1939年からネオファン・ガラスを製造していおり、黄色と紫外線を吸収するもの求めていた。これは太陽の光を防護するために転用できた。現在、ネオハンはサングラスに使用されている。2.7%の酸化セリウムと1.5%の酸化チタンを添加したものは無色で紫外線吸収ガラスとして使用される。
現在のセリウム・ガラスは当然ながらトリウムを含んでおらず、放射性ではない。
また、多くのガラス、特に黄茶色のものは弱い放射線を出すがこれはカリウムー40からのもので全く問題はない。
黄色のカップとカップ皿
セリウム・ガラスで、トリウムを僅かに含む |
黄色の灰皿(Auer社の昔の製品)
セリウム・ガラスで、トリウムを僅かに含む |
|
|
(注1:以下いずれもKT会員による注記)
上記のモーゼル社に関する記載に関連して、 http://www.nobelhaus-glaskunst.de/GTest/Galerie/Maindoc.html のKATALOG(ドイツ語)をクリックすると、Moser社のEldorの商品名で展示されていました。値段は書いていませんが、茶の強い黄色で、渋い洗練されたものでした。Eldorは多分造語でEldorado(黄金郷)にかけたと推定されます。
(注2)
上記のアウエル社に関する記載に関連して、 http://www2.tagesspiegel.de/archiv/2001/03/26/ak-br-6610852.html に、「Oranienburgではトリウムが残っており、1994年には運動場の跳躍場の砂が放射線を出すので使用禁止とされた」という記事がありました。
(注3)
上記のアウエル社名の由来となったAuerとは、1900年にモナザイトからThを抽出したCarl
Auer von Welsbach (1858-1929)のことです。彼はウイーン生まれで、4つもの元素、ネオジウム(Nd)、プラセオジム(Pr)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、を発見した大化学者であり、かつ発明家、事業家でした。
Welsbach博物館HP(英語・ドイツ語)は右記: http://www.althofen.at/welsbach.htm
<TDKホームページ>
1903年、オーストリアの化学者ウェルスバッハは、モナズ石と呼ばれる鉱石に含まれる希土類元素セリウムをマントル材料にわずかに加えると、ガス灯の明るさが数倍にも高まることを発見しました。その一方で、ウェルスバッハはモナズ石の廃物から、人造の火打ち石ともいうべき発火合金をつくりました。これをライター石として用いたのが、フリント式ライターです。
ウランガラス鑑定教室に戻る
[PR]動画