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ウランガラスの真空管(電気通信大学訪問記など)
東京・調布市の電気通信大学・コミュニケーションミュージアムは、真空管発明直後の1910年代のものから最近のものまで約1万本を所蔵しています。
2009年3月に、ここを訪問し、陳列品の数千本の中に10本ほどのウランガラス使用の真空管があることを同館の方から教えて頂き、それらを拝見いたしました。 |
電気通信大のコミュニケーションミュージアムの真空管展示室
(国内外の数千本の真空管が展示されている) |
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展示品や倉庫から探して頂いたウランガラス使用の真空管の数々。(同館のご好意により撮影)
1, - 5, が上段、左から右へ (2の長尺管は下段でカウントしません)。 6,
- 11, が下段、左から右へ
1,EIMAC VT-127-A
2,PL PL-185 USN-CBZC-527A (PENTA LABORATORIES)
3,GE GL-4-125A/4D21 (General Electric)
4,EIMAC 4-65A JAN-CIM4-65A
5,EIMAC 100TH JAN-CIM-100TH
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6,浅田電球製作所の「エジソン電球」2007年頃の試作品。
7,EIMAC 3-50A4 JAN-35T
8,PHILIPS JAN-CNY-3C24/VT-204
9,PL PL-4-400A JAN-CBCZ-4-100A
10,EIMAC 100th 100th/VT218
11,EIMAC 15E |
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「JAN」とは、「Joint Army and Navy」の略。つまり、第二次大戦の米軍用。
4番の「,EIMAC 4-65A JAN-CIM4-65A」の紫外線照射時
先端部分と下部の電極部分がウランガラス |
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5番の「EIMAC 100TH JAN-CIM-100TH」の紫外線照射時
先端と下部などの電極部分がウランガラス
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同館に展示している中で最大のUG真空管:JAN-CWL−861
(Westinghouse社のマークあり)
自然空冷式4極管
1927年製(説明板の記載では1927年とあるが、「JAN」とは、「Joint
Army and Navy」つまり、第二次大戦の米軍用であり、1943年以降の製品の番号とされている。従って、本品も1943年頃の製造と考えられる。2012/7追記)
大塚氏よりの寄贈品 |
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その他、色々、面白いものがあります。カシオ社の「リレー式計算機」とか、NECの「PC9801」などの初期のパソコン、昔の通信装置など、良くこれだけ残せたものだと感心します。その中で1枚だけ写真を紹介します。
日本丸で実際に使用されていた通信装置(奥の2台のみ)と、当時、日本丸の通信士として、運輸省航海訓練所で教官もされていた有澤技術職員。
当時の無線室の雰囲気が出ており、一瞬、船の上にいる印象さえ持ちました。
帆船「日本丸(にっぽんまる)」は、1927年の練習船「霧島丸」の海難事故を契機として、翌年建造された大型の海洋練習船で、現在は引退し、横浜のメモリアルパークに展示されています。 |
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きっかけは:
下の2本の真空管は、静岡県の舘岡さんという方から、物々交換で入手したもので、ウランガラスを使用した真空管です。舘岡さんは、趣味のガラスコレクターであり、真空管の販売をされていて、「米国製の真空管にはガラスと金属線のなじみをよくするために一部のメーカーがウランを使っていて、私もいくつかサンプルを持っています。国産の真空管はどうでしょうか?」とのメールを頂いたのがきっかけです。(2007年9月)
写真左側の普通の大きさの真空管は「3C24」で、「JAN-3C24/VT-204」「米国フィリップス社製」と書いてあります。左横のピンの引き出し部5ミリくらいだけがウランです。「JAN」とは、「Joint
Army and Navy」つまり、米国・陸軍海軍合同部隊で、この真空管が軍事用に使われていた印です。(電通大も所蔵)
写真右側の大きなもの(高さ21cmもある)は「5C22」です。「JAN-CADK-5C22/HT-415」「米国 Kuthe Laboratories製」とあります。天井部が直径5cmほどウランです。自然光でも緑色なので、UG使用と分かります。「サイラトロン」という名前でも呼ばれていたようで、第二次大戦中に、米国の軍用レーダーなどに使われたようです。こんな大きな真空管は見たことがないですね。
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米軍のウランガラス真空管「3C24」と「5C22」 |
2011年1月、秋葉原で会議があり、その合間に、「クラシックコンポ−ネンツ」という真空管ショップへ行きました。国内外の真空管を数千本?置いていました。お店の人に探してもらいつつ、紫外線ランプを当てて、UG真空管を2本買いました。お店のHPは右記。。http://club.pep.ne.jp/classic/open.htm
上記5番の「JAN-100TH」ですが、メーカー名が「PHILIPS」となっていて、その下に「TB3/350」とあります。
長さ19cm、直径7cmと、割と大きい送信管です。
根元部分2箇所がUGで、上のEIMAC社のものと違い、上端はUGではありません。自然光でも緑色なので、UG使用と分かります。
動作品はオーデオアンプなどに使う人が居ると見えて、1本3万円程度ですが、これはジャンクなので、下の品のオマケでした。 |
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こちらは「JAN-719A」です。この真空管は新発見ですね。メーカー名は不明ですが、「MとU」の2文字が見えます。
長さ15cm、直径6cmほど。 |
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戦前、放電管などの真空実験用のガラス器具に電気の導線を封止する時に、用いる金属導線と熱膨張差の少ないウランガラスを接合部分に用いるのは広く行われたことで、アメリカのコーニング社(CORNING GLASS works)が、その為の特別な組成のウランガラスを広く販売していました。
ウランガラスが、本体の硬質ガラスと、電極などの金属の中間の熱膨張率を持っていたので、それを利用していたということです。
右の写真のパイプ(中空の管、直径8mm、長さ100mm)は、デッドストックとして、当HP管理人が米国より購入したものです。
戦前に、米国コーニング(CORNING)社が、ガラス細工用に製造したUGは、熱膨張係数
40X10E-7 cm/cm/C、とされていて、硼珪酸ガラスにウラン塩を熔解したガラスと言われています。
普通のガラス等の熱膨張係数については:
1)窓ガラスなどのソーダガラスが100程度。なお、ソーダガラスにウラン塩を熔解することも可能なので、100程度のUGも存在しています(★下記注)。
2)耐熱ガラス(パイレックスなどの硼珪酸ガラス)が30程度、
3)金属は100から200程度。
(2010/11記) |
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★注:新森会員から、チェコ製の最近のUGの仕様を教えて頂きました。
成分:SiO2=69%, Na2O=11%, CaO=6.5%, K2O=6%,
Al2O3=3%, B2O3=2.5% U3O8=1%以下(いわゆるソーダガラスですが、(普通のソーダガラスには無いはずの)カリウムも少し入っています。
密度=2.5g/cc、軟化点=680℃、熱膨張係数=95X10E-7
cm/cm/C |
日本でも、戦前、東芝の研究所ではウランガラスの研究を行っていたと聞いていますが、製品(真空管)は製造していなかったようです。
ウランガラス同好会の会員の方から「戦争前に、おじさんが東芝の依頼で、ベルギーからウランガラスの材料(重ウラン酸塩)を輸入し、それを使ってウランガラスを作ろうとして、終戦になった」との話を聞きました。
また、電通大の学術調査員の槇さんの話では「同館に保管している日本製真空管にはないようだ。日本ではガラス職人の腕が良かったので、ガラスの構造で逃げたのではないか」とのコメントも頂きました。
米国製では他にVT127A VT327Aなども該当するようです(以下、写真のみ)。
VT127Aは電通大の所蔵品にもありました(上の写真を参照)。
なお、VTとは、米国陸軍が制定した「VT番号」と言われるもので、「VT(Variable
Time)信管=近接信管」とは関係ありません。
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VT127 |
VT327 |
電通大に真空管コレクションを寄贈された大塚久さんの著書「クラシック・ヴァルブ」1994年発行(誠文堂新光社・絶版)にも、UGガラス真空管とは明記されていませんが、P110に、米国EIMAC社の「100TH」と「15E」のUG真空管が掲載されているそうです。
(著者で、同館学術調査員の大塚様より御教授頂きました。)
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PS:電気通信大学を訪問したのは、下記の朝日新聞の記事を読んだのがきっかけです。「1万本もあるなら、きっとウランガラス真空管があるに違いない」と思い、大型の紫外線LEDを差し上げて、探して頂いたのです。同館・学術調査員の槇様、技術職員の有澤様、ありがとうございました。
(お宝発見)真空管コレクション 電気通信大。2009.03.16 朝日新聞(朝刊)
無線機、ラジオ、テレビなどで、かつては電子回路の王様だった真空管。電気通信大(東京都調布市)のコミュニケーションミュージアムは、発明直後の1910年代のものから最近のものまで約1万本を所蔵している。田中正智・学術調査員は「おそらく日本一のコレクションでしょう」と話す。そのうち展示されているのは約2千本で、約1千本は剣山のように美しく陳列されている。長さは数センチから数十センチ、形も細長いものや丸っこいものまで様々だ。日本製のほか、欧米各国製やロシア製もある。特に、1914年に米国で作られた送信用真空管1号機はきわめて貴重なコレクションという。一方、明治から最近までの無線機も展示。日本軍と米軍が、それぞれ太平洋戦争中に使用した無線機もあり、使われている真空管数の差が、当時の国力の違いを物語っている。湯川敬弘館長は「歴史を技術から考えてもらえれば」と話している。(杉本潔)
<メモ> 電気通信大学・コミュニケーションミュージアムは、大学創立80周年の1998年に歴史資料館として開設。2008年に移転して名称も改めた。
開館は、火〜土の午前11時〜午後3時(臨時休館あり)。
入場無料。
問い合わせは事務室(042・443・5296)。 |
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